梅⑩(毛沢東)
高島俊男は『中国の大盗賊』で、毛沢東を称して、
「これぞキワメツケ最後の盗賊皇帝」と書いているが、
毛沢東の文才については認めているのである。
『毛沢東という人は、乱暴者という点ではそれは人なみ
はずれた乱暴者であるが、野蛮で無教養な男ではない。
それどころか、まことに文雅な教養人であった。そこが
歴代の盗賊皇帝とは決定的にちがう点である。』
毛沢東は西洋的教養とは縁のない、生粋の伝統的中国文化人
であった。毛沢東が得意だったのは『詞』(ツー)だった。
梅を詠った陸游の「詠梅」には「朴算子」とある。「朴算子」とは宋時代
に流行した詩の一種『詞』(ツー)の形式のひとつであるらしい。
毛沢東がこの詞をふまえて「詠梅」を作ったことは前に書いた。
『詞』(ツー)というのは、『詩』よりもさらに規則が厳格で難しいらしい。
日本人は「漢詩」と称して『詩』は多く作った。菅原道真などは有名で
中国人も感嘆したという。夏目漱石の趣味は、漢詩を作ることで、
その難しい規則をクリアして作詩するのが無上の楽しみであったらしい。
しかし、日本人には『詞』(ツー)は無理だったらしい。
これほど難しい『詞』(ツー)を毛沢東は多く作った。あの、悪口好きの
高島俊男が、『その「詞」はたいへんいい。単に上手だというだけでなく、
雄渾で英雄の気概があふれている。しかも単に豪放だというのではなく
て、言葉の運用のセンスがいいのである。』とべた誉めしている

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